3.クロレラで白血病は治らない
私の購読している地方紙には、時々クロレラの折り込み広告が入ります。
クロレラで便秘と肩こりが治った!
これは許しましょう。
クロレラで高血圧が良くなった!
百歩譲ってこれも許しましょう。
クロレラで白血病が治った!
これは絶対許せません!
白血病患者の治療にあたる医療スタッフの苦労がどんなものか、これはなかなか一般の方には分かっていただけないでしょう。
もちろん患者さんにその苦労を見せたりはしませんから、患者さんや家族の方にも分からないでしょう。
白血病は、単なる延命ではなく、治癒をめざして治療すべき病気です。
とても困難ではあるが、がんばれば治るかもしれない患者さんの主治医になった医師にかかるストレスはとても大きいものです。
休日返上はもちろんのこと、自分の生命エネルギーを削ってそれを注ぎ込んでいるような思いを感じることさえあります。
そのような努力を重ねるからこそ、患者さんが良くなって退院されるときには、無上の喜びを感じることができるわけです。
その患者さんが、クロレラのおかげで良くなったと少しでも思っているとしたら、とても残念なことです。
患者さんがほめてあげるべきは、つらい治療に耐えた自分自身です。
感謝すべきは、支えてくれた家族や友人、治療に携わった医療スタッフです。
クロレラなんかに、これっぽっちも感謝してほしくないですね。
日本では様々な民間療法がはびこっています。
それをすべて否定してしまうわけではありません。
特に癌患者やその家族が、藁にもすがりたい気持ちになるのはよく分かります。
現在の医学が万能でない以上、将来有望な薬効成分が含まれていないとは断言できません。
ただ、効果を否定できないからといって、週刊誌や広告の内容を鵜呑みにもしないでほしいものです。
こんな例がありました。
血液の病気による特殊な貧血で、輸血なしでは生きられない方がありました。
度重なる輸血で、体内の鉄が過剰な状態でした。
多すぎる鉄は体には毒なのです。
ところが、貧血には鉄分だと、親族の方が鉄分の多い健康食品を食べさせていました。
意に反して、まるで逆効果です。
インフォームドコンセントという言葉は聞かれたことがあるでしょう。
説明と同意ということですが、これは医師からの説明と同意という意味だけではないと思います。
患者さんの方からも、医師に対して説明と同意が必要でしょう。
こんな民間療法を試したいのだが治療には支障ないかと担当医に相談して下さい。
自分が試している民間療法を内緒にしていて、医師の説明が不十分だと怒るのは身勝手なことだと知って下さい。
私は、相談された場合、特に支障のないものであれば、「どうぞお試し下さい。ただし、高価なものほど詐欺の可能性が高いと思いますよ」と答えていました。
クロレラで白血病は治りません!