2.PHARMANEX(ファーマネックス)の栄養補助食品

 PHARMANEX社は栄養補助食品の大手企業です。
 主力商品であるライフパックは、ビタミンやミネラルがバランス良く含まれていて、病気でない方が健康維持に用いる栄養補助食品としては優れた商品かもしれません。(病気の方は主治医にご相談ください)
 知っておいていただきたいのは、企業は慈善事業をしているのではなく、ビジネスチャンスとして日本に進出してきているということです。
 ビジネスとしてPHARMANEXを推奨しているHPをご紹介しておきます。(リンクはしていません)
 http://www.h3.dion.ne.jp/~sohonext/bissness.htm
 以下、HP内容の一部を抜粋しますと、

「90年代に入って市場が急成長。若い女性を中心にしたダイエットブームが火付け役となったのです。
 98年の日本国内の栄養補助食品市場の規模は、7000億円にまで膨らんでいます。
 ファーマネックス社の代理店になると、その強力な競争力を持つ製品全てを販売できるだけでなく、傘下にフランチャイズを次々に作って行くことが可能になります。そして、フランチャイズが増えて行けばいくほど、そのリーダー、つまりあなたが手にするコミッションやボーナスが増えて行きます。
 ファーマネックスが日本上陸してからまだわずか1年と少しであるにも関わらず、年収数1000万円の方
も現れてきています。しかも、代理店が手にするのは権利収入であるため、その収益は半永久的に続きます。」

 このHPをご覧になればわかりますように、フランチャイズ制ですから、インターネット時代では代理店同士も競争にさらされます。
 健康な方を対象としているだけでは業績が伸びませんから、業者のなかには癌患者を対象に悪徳ビジネスに走るところも出てくるわけです。

 次に、以下のページへ行って、内容を読んでから、また戻ってきてください。
 http://homepage2.nifty.com/BPSTORE/oogane.htm
 http://www.t-island.co.jp/newpage477.htm

 お帰りなさい。どう思われましたか。これらのHPの文章を読むと、末期癌の方があたかもPHARMANEX社のライフパックとティグリーンで治癒した事例かのように受け取られるでしょう。
 ところが私がもらったこの事例のセミナー資料によりますと、これはセミナーで洗脳しようという商法です。(「薬事法違反になるので録音や撮影を禁じます」と、自分たちは違法行為をしていることを宣言しているところが笑えます)
 資料によりますと、この方は、「胃十二指腸に悪性腫瘍が発見され、病期4Bでチョップ療法を8クール受け、寛解に入った」とあります。
 血液内科医がこの文章を読みますと、この方は胃癌ではなく、悪性リンパ腫であろうと推測されます。「病期4B」「チョップ療法」「寛解」という言葉は、いずれも胃癌では用いられることがなく、血液の悪性腫瘍で用いられる用語だからです。
 悪性リンパ腫の方がチョップ療法8クールで寛解に入ったとすれば、これは不思議でもなんでもないことです。化学療法で良くなった通常の治療経過です。外来で治療できたという点だけは、確かに学会発表の価値がある例でしょう。(悪性リンパ腫については、このHPの別項をご覧ください)
 一般の方は医学知識がありませんから、セミナーで聞くと、癌末期の方がライフパックとティグリーンで治癒したかのように洗脳されてしまうのでしょう。
 インターネットの文章では、化学療法を受けたことが全く抜け落ちており、明らかに虚偽情報です。

 ティグリーンという商品は、緑茶から作られた栄養補助食品です。
 PHARMANEXの公式サイトでは、「あくまで健康維持が目的であり、病気の治療を目的としたものではありません」と明示してあります。
 しかし、インターネット上には、抗酸化作用、ポリフェノール、カテキンなどの言葉で癌患者家族の心をくすぐり、ティグリーンの抗癌作用を強調している営業サイトがたくさん見つかります。
 悪質なものは、メールマガジンで、
「末期ガンで治った方あり!!ついにアメリカで副作用のないものが開発!!(その他あらゆる病気に対応した情報も)まだ医者もしらない貴重な情報をお伝えします。はやく多くの方にお伝えしたいと思ってます」
などと、癌患者家族の関心を引いています。同じ製品を通常価格の2倍以上の価格で販売していたり、癌患者の場合は通常量の倍以上の服用を勧めたりしています。
 (ちなみに2001年7月現在ティグリーン30粒は、卸価格2300円、参考小売価格3280円です。ライフパックとティグリーンを併用すると1か月約1万7千円です。)

 実際に健康食品を販売されている末端の方の中には、自分自身が癌への薬効を信じているためボランティアに近い感覚でがんばっている方もあるらしいということが、事態をより複雑にしています。
 上述の悪性リンパ腫の患者さんも、自分では本当にティグリーンで治ったと信じておられるのかもしれません。
 信者の方から見ると、私のような者は「信じることのできない、かわいそうな人」なのです。

 私は、ここでライフパックやティグリーンの効果を否定しようとしているのではありません。
 健康食品の販売方法に行きすぎた行為があるということ、インターネット情報を鵜呑みにしてはならないということの実例を示しているのです。

 癌の予防効果があるかもしれないということ、あるいは実験で抗癌作用が認められたということから、末期癌患者の癌が治るかのように宣伝するのは薬事法違反であり、悪徳商法です。
 PHARMANEX社の主張する栄養補助(サプリメント)という考え方は、健康を強く意識する方には有用なものです。癌患者においても、不足するビタミン等を補助することは意味があります。
 儲けるためには手段を選ばない悪徳業者の存在が、日本における正しい知識普及をねじ曲げ、優れた商品の価値を逆におとしめているように思えてなりません。