悪性リンパ腫について

 白血病や悪性リンパ腫など、血液の悪性疾患は、他の癌とは全く異なる考え方が必要です。
 手術療法が主となる胃癌などの固形癌と違い、血液内科で治療すべき疾患です。
 現在では、化学療法や骨髄移植などで完全に治す(治癒)ことが可能な疾患もあります。
 ここでは、悪性リンパ腫のなかでも日本人に多い非ホジキンリンパ腫の治療方針についてご説明しましょう。

 悪性リンパ腫とは、白血球の中のリンパ球という細胞が腫瘍化したものです。その中には様々なタイプのリンパ腫があります。
 血液学の進歩はとても速く、10年もするとリンパ腫の分類法が全く変わってしまうほどです。
もちろん治療法も日進月歩ですから、ここでの記述も近い将来古くさいものになってしまうかもしれません。

 治療方針は、病期と組織型によって異なります。
 病期は1期から4期に分類されます。
 たとえば首のリンパ節だけに限局しているような病期1や病期2では、組織型によらず治癒をめざした放射線療法などが行われます。もっと広い範囲が侵された病期3や病期4では、組織型によって治療法が異なります。
 組織型は、悪性度によって3段階に分類されることが多いのですが、治療方針という点では2つに大別されます。

 一方は、悪性度が低く、進行がゆっくりしているグループです。治療しなくても1年以内に命取りになる方は少数です。このグループに対して強力な化学療法を行った場合、見かけ上病気が認められない状態(寛解といいます)になることはあっても、治癒させることは困難です。高齢者などでは無治療で経過を観察する場合もあります。なぜなら、化学療法には副作用が伴いますし、副作用で亡くなる方がゼロではないからです。無治療でも5年以上生きられる高齢者の方を治療して、副作用で生活が制限されたり死亡されたりする結果になってはいけません。もちろん、経過観察中に状態が変化して、必要と判断されれば化学療法などの積極的治療が行われます。

 もう一方は、悪性度が高く、治療しなければほとんどの方が1年以内に亡くなってしまうグループです。このグループには強力な化学療法が行われ、寛解状態に至るだけでなく治癒する方もあります。つまり、治癒を期待して強力な治療を行うべきグループです。患者さんにはつらい治療になりますが、「治癒」という希望があります。

 現在では、幹細胞移植など他の治療法もありますので、治療方針の決定はさらに複雑です。

 病期や組織型、さらに患者さんの年齢や体力によって、治療方針が異なるということを知ってください。
 どんな病気でもそうですが、適切な治療方針を決めるには、正確な診断が不可欠です。きちんと説明を受けていないと、「検査ばかりで治療を始めてくれない」と患者さんが不満に思い、「実験動物扱いされている」と誤解される方さえあるようです。

 悪性リンパ腫についてもっと詳しく知りたい方は、がんセンターのホームページなどに詳しい記述があります。